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うさぎとかめ



『思いわずらうことなく愉しく生きよ』

メーメーさんとSトーさん絶賛の上書、Sトーに借りて読みました。ありがとう。

好きだった文章を3箇所。



「時刻は午後三時になろうとしていた。麻子の説明と相原雪枝のすすり泣きに始まった女達の会合は、治子の怒りと苛立ちや、育子のまっとうすぎる感想と質問――『でも、麻子ちゃん自身はどうしたいの?』――を経て、堂々めぐりをくり返した挙句、ワインと香水と涙とため息と、ときどき誰かが心ならずも投げつけてしまう険のある発言とで淀んだ部屋の空気同様に、すっかり疲弊して息苦しい、八方塞がりの様相を呈している。」(p.246)



「『ええ元気よ』
と、こたえた。だされた赤ワインのグラスをとり、
『新年会よね、これ』
と言う。包帯のない右手はなめらかに動いたが、手のひらは傷だらけだった。育子も治子もそのことには気付いていない。そして、気付かれてもかまわない、と麻子が考えていることにも。」(p.346-7)



「午後十時十五分。育子は思うのだが、男の人というのは夜の深さを時計でしか計れない。」(p.361)



物事の描写が非常に緻密でかつ自然で、言い回しが巧みで美しい文章。(こういう文章を僕はおもしろいと感じるんだけど。)

それと、読んでいて思ったんだけど、ハルキ文学と似ているところがある。

描写の繊細さや、小説の中でよく出てくる酒と肴の描写の仕方なんてとくに。

複数の物語(3人の女の生き方)が同時進行していくと同時にそれは1つの物語(家族)でもある。というような書き方なんか特に『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』以降のハルキの書き方によく似ていると思うんだけど。
どうだろう。

あとは、お互いの著者は著者と同姓の主人公を起用して、その性に立った思考を忠実に、しかもその性がもつ本質的な部分をありありと描くことに成功してるということ。

だからおもしろいんだと思う。

1つ大きな違いは、エクニンはリアルに、ハルキはファンタジーに近い小説を書くということかしらん。

そんな感想。
# by humhumhuhumhum | 2007-11-07 00:56


どっちが早いか競走しましょう。

by humhumhuhumhum
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